この記事では、異業種からトラックドライバー未経験で転職を考えている方で、トラックの運転に不安を感じている方に、乗用車とトラックでの運転の違いをお伝えしていきます。
実際にトラックに乗って運転しないとイメージが湧かないこともあります。しかし、普段、乗用車に乗っている方であれば、乗用車との違いが分かればイメージできることも多くあります。
この記事ですべてを網羅することはできませんので、乗用車とトラックの主な違い11個について、その内容と運転時の注意点や大事なことをお伝えします。
当社では2t、3t、4t車を保有しています。
当社が保有するトラックの場合、2t車は準中型免許、3tと4t車は中型免許が必要になります。
ただし、平成19年6月2日より前に普通免許を取得した方は、19年6月2日以降の免許更新時に8t限定中型免許となり、車両総重量8トン未満、最大積載量5トン未満、乗車定員10人以下の中型自動車を運転できます。
当社の4t車は車両総重量が8t未満のため、中型免許を持っている人と平成19年6月2日以前の普通免許(8t限定中型免許)を持っている人は、すべてのトラックを運転できます。
トラックの積載量が違うので大きさが変わってきます。
また、「ショート」「ロング」「ワイド」「ワイドロング」の形状があり、それによっても大きさが変わります。
当社が保有する2t車は、横浜営業所でショートが少しありますがワイドロングがほとんどです。
3t車もワイドロングで4t車ほどではないですが標準と言われているものと比べるとワイドでロングです。積載量は取れているけどボディサイズが一サイズ小さく、車両総重量が7.5t~8t未満の間の大きさになります。
4t車は、2t・3t車と比べるとやはり車幅と長さがあり大きいです。
4tのワイドロングだと長さが1m、幅20cmくらいは変わってきます。
トラックのブレーキは、乗用車にもあるフットブレーキと排気ブレーキというエンジンブレーキの一種の2つがあります。
小型のトラックでは一般の乗用車で搭載されている油圧ブレーキになるため、基本的には乗用車とほぼ一緒と思って良いです。トラックはディスクブレーキではなくドラムブレーキという違いはありますが、ブレーキを踏んだ感じは乗用車に近い感じです。
油圧ブレーキというのは、ブレーキペダルを踏むと油圧が伝わり、その力でディスクキャリパーやブレーキライニングが作動し、ブレーキディスクやドラムとの摩擦によって止まる仕組みのブレーキです。ブレーキを踏んだときのダイレクト感があり、ブレーキのかかり具合を調整しやすいです。
エアブレーキを搭載しています。エアブレーキは、空気を圧縮してエアタンクに溜めます。その圧縮した空気を押し出すことでブレーキをかけます。トラックが停車するとき、「プシュッ」という音を聞いたことがありませんか?あの音が、エアブレーキを使ったときの音です。
エアブレーキと油圧ブレーキの違いは、空気を押すのか液体を押すのかの違いになりますが、エアブレーキはオンかオフかという感じで微妙な調整が難しいです。乗用車と同じ感覚でブレーキを踏むと、ブレーキが効き過ぎてしまい、カックンという感じで急ブレーキがかかってしまいますので、注意が必要です。
ブレーキを踏む微妙なタッチは覚えるのに時間がかかりますが、感覚を覚えれば大丈夫ですし、同乗研修もありますし、経験すれば慣れていきますので特に心配する必要はありません。
乗用車との違いでいうと、トラックには排気ブレーキというものがあります。
初めて聞くブレーキだと思いますが、マフラーにバルブが付いていて運転席の手元にあるスイッチでオンオフすることで、排気ガスを制御してエンジンブレーキの効果を増加させる補助的なブレーキになります。スイッチをオンにしてアクセルから足を離すとブレーキがかかります。
もともとトラックのディーゼルエンジンはガソリンエンジンと比較してエンジンブレーキが弱いです。トラックに荷物を積んで重くなると重量でブレーキが効きにくくなり、例えば下り坂ではエンジンブレーキのみでの減速は車両の重量が優ってしまい制動しきれない状況になることがありますが、排気ブレーキを使うことで、必要な制動力を得ることができます。
内輪差とは、前輪の軌道と後輪の軌道の間の差を意味します。
車両が大きくなればなるほど、内輪差の発生は大きくなります。
2tショートは乗用車とそんなに変わりません。
2t標準からハンドルを切り始めるタイミングを遅らせる必要があります。車両が長くなればなるほど、曲がりたい方へハンドルを切るタイミングを遅らせないと、内輪差が発生します。
乗用車感覚でハンドルを切り始めると歩道に乗り上げてしまったり、歩道を歩いている人を巻き込んでしまう可能性があります。
トラックは乗用車感覚では乗れない、内輪差が発生するということを意識して運転することが大切になります。
これは内輪差と違って、トラックドライバー未経験の人は聞きなれない言葉かもしれません。
乗用車では基本的にオーバーハングがない、あっても小さいため、気にしたこともないと思います。
オーバーハングとは、トラックは車体が長く、後輪よりも後方にある車体部分が右左折するときにハンドルを切った方向と逆側にはみ出すことです。そのため、車体が長ければ長いトラックほどオーバーハングが大きくなります。
おそらくトラックに初めて乗る人は、結構曲がるなという感覚になると思います。結構曲がるので小回りは効くけど、オーバーハングがあるので気を付けないと事故になってしまいます。
右左折をするときと、狭い場所では特にオーバーハングに気を付けなければいけません。
例えば、ブロック塀がある細い道で駐車するときに寄せすぎると、出るときにオーバーハングが大きいトラックだと徐々にハンドルを切らないとブロック塀にぶつかってしまいます。
また、トラックの死角にも関係しますが、店舗の上についている看板は気を付けましょう。
オーバーハングに気を付けて横を確認していたけど、上に付いている看板に気が付かず、オーバーハングで看板にぶつけて壊してしまうということもあります。
他にも、センター(物流センター、配送センターなど)に止めるときは扉をあけて止めます。発車するときに隣にトラックがいると扉を閉めるための隙間がありません。前に出すときに、ちょっと早めにハンドルを切りすぎると、開けてある扉が隣のトラックのミラーにぶつかってしまいますので、注意が必要です。
オーバーハングは内輪差と同じで、まずはオーバーハングがあるということを意識すること。そして、頭の中で自分のトラックがどう動いているか想像しながら運転することが大切です。
乗用車のガソリンエンジンは高回転高出力型。トラックのエンジンは低回転高トルク型になります。
違いは、トラックは乗用車と比べて低い回転数から力を発揮できます。その代わり高回転で回らないため、減速しながらシフトダウンするのは良いですが、ブレーキを踏まずにシフトダウンするとエンジンが壊れてしまう可能性があります。
これはマニュアル車に限った話ではなく、オートマ車でもマニュアルモードにしてシフトアップ・シフトダウンができるため、減速のために無理にシフトダウンをされるとコンピューター制御しているとはいえ、壊れてしまう可能性はあります。
一気に壊れなくても、蓄積していくことで壊れてしまうこともありますので、なるべく高回転で運転しないというのがトラックのエンジンになります。
エンジンによりますが、エコドライブで推奨されているのは、タコメーターの1/3くらいでシフトアップ、シフトダウンするのが効率で良いとトラックはされています。
また、加速するときに回転が上がらないからとアクセルを踏み込んでも、踏み込んだだけ加速することはありません。ガソリンエンジンは入ってくる空気の量を調節して回転数を調整しますが、ディーゼルエンジンは噴射する燃料の量を調整することで回転数を変えるようになっています。そのため、燃料の噴射ばかりが多くなり燃費が悪くなってしまいます。
トラックのエンジンは低回転のときから高トルクなため、アクセルを踏まなくてもクラッチだけ進みます。そのため、クラッチをつなぐときに乗用車よりはエンストしにくく感じる人が多いです。
死角は乗用車と違ってたくさんあります。
特に、横と後ろの死角は乗用車より多いです。
例えば、トラックのピラー(窓枠の柱)は乗用車より太いため、それが死角となって真横にいるバイクの発見が遅れやすくなります。
ドアミラーが大きいため右左折するときに、歩道を歩いている歩行者が丸々ミラーで隠れて見えなくなることがあります。結構ミラーによる死角は怖いです。
4t車は運転席の高さが高くなります。助手席の足元もガラスになって見えるようになっていますが、それでも死角ができてしまいます。ミラーは湾曲していて放射状に写るため、放射状にかからない部分は見えません。真横は見えにくく、下になるとさらに見にくくなり、4t車だと歩行者が見えないので注意が必要です。
バックアイカメラは、後方全体が映し出されるものもありますが、放射状で上の方は映し出されないものがあります。
バックアイカメラを見てバックする人が多いですが、実は距離感がつかみにくいです。ぎりぎりまでバックしようとカメラを見てやると、まだ余裕があると思ってもかなりギリギリということになります。バックアイカメラだけに頼らず、ミラーや目視による確認が大切です。
事故で一番多いのは駐車場かUターンのためにバックするときです。
実際にパイロンを立てて、どの位置だとどんな見え方をするのかを確認して感覚を掴みましょう。
2tショートは乗用車と変わりません。ワゴン車みたいな感じです。
ワイドになると結構車幅があるように感じます。
狭い道では電柱がギリギリに感じます。狭い商店街を走行するときは、注意しないと店舗の軒先テントにぶつかってしまいます。
車高は乗用車と全然違います。
座る位置が高くなると、死角は多いですが視界は広くなります。乗用車より前方は見やすく感じます。前方真下もアンダーミラーで確認できます。
車高は高さ制限に気を付けなければいけません。
たとえば、高架下で箱の屋根をぶつける、高架下の天井にひっかかって進まなくなるということがあります。他にも、商業施設や地下駐車場などでは上部の端に、パイプや配電盤など出っ張ったものがあることが多く、寄せすぎるとぶつけてしまいます。
事業用ですので、スピードが出るか出ないかということではなく、コンプライアンスの観点で法定速度を守ってもらうのが大前提です。
法定速度があるのは、事故を起こさないためと仮に事故が起きても事故が大きくならないためです。きっちり守りましょう。
特徴的なこととしては、エンジンのところで書きましたが、トラックは乗用車と比べると加速力は劣ります。加速しようとアクセルを踏んでも加速しませんし、踏みすぎると燃費が悪くなるだけです。
また、トラックはトルクがある分、出だしはパワフルです。そのため、急発進するとラッシング(荷物を固定するベルト)のかかりが悪いと外れてしまうことがあります。
基本的にはラッシングで固定しているので荷崩れはしません。
スピードを出しすぎることで、積み方によっては荷崩れして他店舗のものと混ざったりすることがあります。
コンプライアンスの観点とともに、荷崩れの観点からも法定速度を守って運転してください。
トラックは車体側面の面積が広く、空気抵抗を考えた形ではないため、乗用車とは比べ物にならないくらい風の影響を受けます。側面から強い風を受けると横転する危険があります。
基本的には、速度を十分に落としてゆっくり走ってください。
トラックは重心の位置が高くなっています。重い荷物が上に積まれている等、積み込んだ荷物の状態ではさらに重心が高くなり、強風で横転しやすくなります。
基本的には乗用車と同じでサイドブレーキを引いて停車し、半クラッチにしてサイドブレーキを戻して坂道発進します。
エンジンのところで書きましたが、トラックは乗用車と違いクラッチ操作だけで進みます。さすがに坂道ではクラッチ操作だけで発進はできませんが止まることはできます。しかし、それをやるとクラッチが壊れてしまいます。
また、坂道発進時にブレーキペダルから足を離しても、クラッチがつながるまではブレーキがオン状態を保つ機構があるトラックもあり、坂道発進に失敗しても後退することはありません。
そういう機構に頼るのではなく、基本はサイドブレーキを使って坂道発進をします。
今までの経験から、乗用車で坂道発進に苦手意識ある人はトラックでも苦手意識が働いてエンストしやすい傾向があります。ただし、これまでの説明のとおり、トラックのエンジンはクラッチをつなぐときにエンストしにくいこともあり、乗用車よりも坂道発進を楽に感じる人が多いです。
トラックと乗用車の違いを11個の観点からお伝えしました。
トラックと乗用車では大きさも違えば、作りも違いますので、色々な違いがあります。
しかし、違いを理解、意識して運転すれば問題ありません。経験や慣れによって運転技術が向上していきますが、逆に慣れから来る不注意が事故につながります。これは乗用車でも同じですので、安全第一で運転していただきたいです。
もし不安があれば同乗研修もありますし、先輩ドライバーに相談したりする中で解消していきましょう。